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No.41 忍者の悲しみ

平成14年5月31日
佐田靖治


指輪物語のガンダルフやハリー・ポッターではないけれど、日本では現代になっても外からさまざまな賢者が入り込んでくる。古くは仙人、御霊師、そして仏賢者やハイラーキーの導師方、その他もろもろ渡来して根づいた。外から世界の縮図である日本に流れ込む動きは、昔も今も変らない。

それに対して日本から外に出たものはそう多くはない。縮図日本はまだまだ世界には閉ざされている。冗談めいた賢者で言えば、日本から世界に送り出されたものは忍者であった。忍者はイエスのようには救いを説かない。水の上を歩いたり姿を消すことは同じでも、忍者はアクロバットのほうを好むらしい。

ガンダルフは日本では武内宿禰や聖徳太子、ハリー・ポッターは表に出られない忍者型。世を守るために忍者は働くが、権謀術数のために使われて、あまりいい姿としては描かれない。そこにはカバラや錬金術師のような暗い陰がある。暗い陰というよりは黒魔術を使う超能力者として扱われている、と言えばいいのだろうか。

ナザルバエフ大統領はトビリシの隠者だそうである。思いがけないところに忍者はいて、世に出れば国の指導者として立つこともできる。真田幸村は忍者の出、そのほか思いがけない人物に賢者の影がある。古今東西そうした例はたくさんある。

科学万能のコンピューター文明社会が世界中に広がって、異次元感覚や超能力は表からは消えた。しかし、賢者や忍者へのあこがれはよみがえり、それが異次元の超科学であることを暗示し始めたが、日本の忍者には宇宙科学を感じさせるものはほとんどなかった。外国に輸出されてKGBやCIAになってしまったのか、日本ではあまり忍者は見当たらず、科学的な外国の賢者がはやる。

こんなことを書くとあちこちからクレームがつきそうだが、風は時と所をかまわずまつわりついていたずらし、ときにたぶらかし、ときに真相をさらし出す。しかし、まだまだ風の便りは人間には届かない。一度死んでしまった自然の風は、扇風機やクーラーの便利さにはかなわない。


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